【セシル】
「あっ……見て」

セシルが小さく叫んだ。

顔を上げて前方を見据えると、そこだけ茂る木々を切り取ったような空間が開けている。

そして、その中心には――

【クレア】
「これが……『円環の柩』……?」

【アーヴィン】
「すげー、まるで貴族のお屋敷じゃん。……って、まさにそうだったな」

【ルイス】
「これが別荘だったなんて信じられないよ」

【コリン】
「エレイン、ぼくたちの家じゃ全然敵わないね」

【エレイン】
「当たり前でしょ。侯爵の持ち物だったんだから」

わたしだけじゃなく、みんなが足を止め、それに目を奪われていた。

『円環の柩』――その名の通り、サイズの違う円柱が三つ重なったような外観は、遠目に見ても、街に住む富豪の邸宅顔負けの迫力だ。

【エリオット】
「美しい! 何という美しさだっ」

【エリオット】
「こうしちゃいられない、もっと近くで拝見しようじゃないか!」

ツアーを熱望していたエリオットが興奮気味に駆け出すと、つられるように他のメンバーも後を追った。

【ジェラルド】
「…………」

振り向いてみると、ジェラルドだけはマイペースを貫いていたけれど。



*****



【アーヴィン】
「近くで見ると余計にスゲェな」

【セシル】
「もっとくたびれているかと思っていたんだけど、案外綺麗なのね」

【エリオット】
「エインズワース家の財力を見せつけられた気分だよっ」

石造りの建物はところどころヒビが入っている箇所もあるものの、この不気味な空間には釣り合わない気品が漂っている。

【エレイン】
「……今、雨が落ちてきたような」

手のひらを空に向けたエレインがぽつりと呟く。

怪しい天気だとは思っていたけれど、ついに崩れ始めたようだ。